日本財団 図書館


?T 理論と問題状況

 

第1章 市民セクターと行政の連携

−研究動向と分析視角−

 

前田成東

 

1. はじめに

 

ボランティア活動、市民活動あるいは非営利組織(NPO=Non−profit O?ranization)の活動への関心が急速に高まってきていることの大きな契機として、1995(平成7)年1月における阪神・淡路大震災があげられることが多い。たしかに、これらの活動を調査対象とした各種の報告書のなかで震災以降刊行されたものの多くは、調査研究の背景として震災に言及している1))。しかし、震災以前から高齢化、国際化の進展による社会環境の変化に対応する主体として、福祉、教育、環境保護、国際協力をはじめとする分野で多彩なボランティア活動が行われている。
そしてまた、この種の活動に対する関心は、とりわけ1990年代以降高まってきている。このことは、新聞誌上において社会参加にかんする記事が90年代に入って急増していることからも明らかである(図1参照)。とくに「ボランティア」「NPO・NGO」をキー・ワードとする記事が震災以前の93年、94年に著しい伸びをみせていることが注目される。この時期に震災以降相次いで刊行された報告書において必ずといってよいほど参照されるNIRA(総合研究開発機構)の報告書『市民公益活動基盤整備に関する調査研究』が刊行されている2))。逆に、「メセナ・フィランソロピー」「社会貢献」にかんする記事が伸び悩んでいることはバブル経済の崩壊による企業財団の活動の停滞が背景であるといえよう。
このように、日本においてここ数年調査研究活動が活発になっている背景として見逃すことができないのは、いわゆる「NPO法案」の議論である。93年4月の東京ランポにおける「市民活動推進法研究会」の開始、あるいは94年11月の「市民活動を支える制度をつくる会(C’s)」結成、その後の各政党における市民活動支援のための法案の公表など、この2,3年において急速な展開をみせている3)
さて、すでに多くの報告書が刊行されているなかで、本報告書においては、ボランティア活動、市民活動、NPOの活動など、様々な呼称でとらえられる活動について、とりあ

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION